朝日新聞 東京版2009年10月15日
韓国・済州島のマッコリ(濁り酒)に魅せられた20代の兄弟が、自ら輸入を始めた。非加熱の生マッコリは「島外不出」とされていたが、醸造元に通って口説き落とした。原動力になったのは、本物の味を日本でも楽しんでほしいという思い。「マッコリは韓国の民衆文化の象徴。日本でも認知度が上がっており、日韓の相互理解にもつなげたい」と意気込む。
小金井市の中條朝(はじめ)さん(26)、東久留米市の暁(あきら)さん(21)の兄弟。「かめに商事」(東久留米市)を設立し、7月に初輸入した。
白色の「済州マッコリ」は、さらりとした辛口が特徴だ。微炭酸を含み、発酵の具合で日によって味が違う。アルコール分も6度と、ビールと同程度で飲みやすい。
朝さんによると、マッコリは蒸した米と小麦粉に酵母菌、こうじ菌と水を加え、発酵させてつくる。日本で飲めるマッコリの多くは加熱処理してあり、甘めだという。
朝さんが済州島で生マッコリと出会ったのは、24歳の時。「こんなにおいしい辛口があるのか」と新鮮で、日本に紹介したいと考えた。東京経済大生だった21~23歳に約20カ国を旅し、各地での体験から「酒を飲んでいる時は誰もが対等・平等」と学んだ。起業するなら酒で、とのこだわりもあった。
しかし、醸造元の済州合同醸造を今年2月に初めて訪ねると、「韓国本土にも送っていないのに無理」と冷たい言葉が返ってきた。
輸送や保管の途中に味が落ちるのが心配らしいと分かり、冷蔵コンテナ船を利用したり、冷蔵倉庫に一定の温度で保管したりする段取りをつけ、提案した。3カ月後には相手の表情が柔らかくなり、「そこまで好きなら、やってみろ」とOKが出た。
一般酒類小売業の免許取得など必要な手続きには、約4カ月かけて自分たちで取り組んだ。販路の開拓も手探りで、サンプルを携えては韓国料理店などに飛び込み営業をしている。
初回の7月は2400本を輸入。以来、月に一度のペースで、これまでに都内を中心に約50の飲食店に販売し、うち新宿区や荒川区、国分寺市、府中市などの約30店が継続して仕入れているという。賞味期限は製造から100日だが、「一番おいしい状態で飲んでほしい」と、40日を過ぎたものは出荷しない。
「在日韓国・朝鮮人から『1世がつくっていた味』との評も聞いた。最近は注文が入るようになり、手応えを感じる。丁寧に売っていきたい」と朝さん。月に10万本が目標だ。
【小石勝朗】
毎日新聞 大阪本社版2009年7月29日
幻のマッコリ」日本に初上陸
~起業26歳 済州島の醸造元口説き~
韓国内でも産地でしか飲めず、“幻のマッコリ”といわれる済州島産の生マッコリが日本に初上陸した。加熱処理した通常製品と異なる。“島外不出”とされ、韓国本土でもなかなか飲めないが、「うまいマッコリを日本でも」という26歳の情熱が実現させた。
マッコリは、米や小麦を主原料に発酵させて造るアルコール度数6~8度の白濁した伝統醸造酒。韓流ブームに乗って日本でも需要が増えた。韓国関税庁のまとめでは、対日輸出量は、04年の2069トンから08年には4890トンに伸びた。
東京都内のマッコリ専門店によると、日本で流通するのは、韓国本土や日本で醸造された約80種。多くは賞味期限が半年以上の加熱処理された銘柄だ。自然発酵が続く生マッコリは味が変化しやすく、賞味期限も短いため流通量はわずかだ。
輸入にこぎつけたのは、昨年、都内で酒類卸小売業を始めた中條朝(はじめ)さん。大学時代、アジアを一人旅した際、済州島のマッコリに出合った。第一印象は「辛い」。中條さんによると、済州島産は、世界遺産・漢拏山(ハルラサン)の地下水で仕込み、生きた酵母が生み出す炭酸と相まって、ともすれば「甘ったるい」従来品とは一線を画す。
帰国後に起業し、今年2月に済州島の生マッコリをほぼ独占生産する済州合同醸造の高相候(コサンフ)社長を訪問。日本からの商談は「管理が難しく、韓国本土にも送ったことがない」と断ってきたが、中條さんは冷蔵コンテナの利用など鮮度を保つ輸送方法を提案。4カ月間に3度、島を訪ねて口説き落とした。
今月末、都内の約20店舗で本格的に取り扱いが始まり、将来は関西でも販売する計画だ。中條さんは、「済州島の文化の豊かさを知ってもらえれば」と意気込む。
【松井豊】